集団療法の終り

集団療法に出かけた。今日限りになるのかはわからない。*1今日で終りな気もしたので、顔見知りの他の患者さんに「今日で終りかもしれません。」と打ち明けた。すると、「無理しないで下さいね。」と言われた。この患者さんは自分よりも療養期間が長いはずだ。少なくとも集団療法に参加しはじめたときから既に居られた。まあ、いってみれば先輩にあたるのだが、何故だかこの言葉が心地良かった。
都会に住む人々の多くは、さまざまな観点で緊迫した毎日をおくっているのではないかと思う。緊迫するしないは、本人の自由ではないかとも思う。松下幸之助が「真剣で無いことを恐れたい。」といったが、ずっと真剣でいるのは息が持たない。真剣でありたければそうすれば良いし、そうでなければダラリとして良いものではないか。
息継ぎもせず一所懸命に生きることは素晴らしいと思えるか。わき目も振らずやることを全く良いと思わない。中学校の頃に成績がクラスで最も悪かったため、担任から、「怠慢だ!」といわれたことを思い出した。そう言われて普通なら打ちひしがれるところかもしれないが、当時の自分はなんとも思わなかった。そう、根本的に他からすれば怠慢な人間なのだ。怠慢であるからこそ、逆に真剣になる一瞬を求めることもある。
「無理しないで下さいね。」は、怠慢を推奨するもので、極度の協調を求められる現代社会においては問題があるないようだ。このフレーズは良く使われるが、真意は以下のとおりだ。

「無理しないでくださいね。」
⇒死なない程度に完遂してくれ。たのむよ。
⇒やっとけよ。けど病気になるなよ。
⇒全然楽勝でしょう。もう言うことは無いから、とりあえず。
⇒先帰るから、後はキチンと終らせといて。
⇒必要以上のことはやるなよ。いったことを完璧にやればよいだけだ。
⇒ご機嫌いかがですか。優しく声かけたんだから、後はよろしく。
⇒無理いってないよな。そんなに大変じゃないっていってくれよ。

一方で、この「先輩」の言葉はそのどれにもあたらない。寧ろ、

「無理しないでくださいね。」
⇒世の中って魑魅魍魎とした世界だよ。巧くやれなければ、直ぐにでも帰還せよ。
⇒好きなようにやればよいよ。なんなら、何もしなくても良いのだよ。
⇒とりあえず、世の中にアクセスしてみれば。形勢を良くみて飛ばしすぎないようにね。
⇒ゆっくりと、片足ずつ足元をよく見て前進したほうがよいよ。トゲだらけだからね。

この「先輩」が言う言葉は、心地よく生きることを考えた場合、とても正直で素直でありがたい言葉なのだ。「無理しないで下さいね。」を、どういう意味で発言されたのか。言葉を聴いたときは、枯れていた思考に澄んだ水を注がれた気分がした。本当のところは、これ以上のコミュニケーションをとっていないから、わからない。むしろ、どのように捕らえるかが次のステップなのかもしれない。

調査・リサーチ活動の進め方 (日経文庫)

調査・リサーチ活動の進め方 (日経文庫)

読み易い本だった。さまざまな調査手法や調査票の具体的な設計方法など、「すぐに使える」ノウハウが詰まっている。一方で、この本は社会調査に関する本であるとも捕らえられる。社会調査については学術的にもさまざまな文献がある。*2本書はそれとは相容れない趣向で書かれている。方法が記載されているが、方法の中身までは立ち入らず、列挙にとどまっている。*3しかし、調査・研究の実際に適用するためには、もう一段深堀する必要を感じるものの、社会調査やマーケティングをこれから志す人には丁度良い入門書だと思う。なお、大学のテキストにも使われているようだが、それには不向きだ。あくまで実務家向きで教育用ではない。

*1:4月からは社会復帰する予定になっている。過去の日記を参照。

*2:まさに社会学の分野だ。

*3:文庫本だから限界もあるのだろうが。