トンネル

頭にこびりついて離れないことが無いだろうか。心にこびりついて離れないことが無いだろうか。毎日の生活の中で常に潜む暗闇。歳をとるにつれポツポツと丸い小さな暗闇は増えてゆくのだろうか。誰もが抱えていることのように思える。真っ白いキャンパスに色が塗られていくと、やがて色の重なり部分は黒くなるのに似ている。突然に10年以上前のことが頭をよぎることが最近ある。朝、道を歩いているときや、電車のつり宣伝を見ているとき。明確なものではないが、印象的な場面がぼんやりと思い浮かぶ。暗闇は残り続ける。最後にはすべて闇で覆いつくされる。どうも早くにそれはやってきそうな気がする。焼かれる、焼かれると思う。火葬を直視したことはあるだろうか。中身が抜けた人は高温で処理されるのだ。今、まわりに居る人はほぼ間違いなく死ぬ。日本に住んでいるかぎり、まず焼かれるのだ。まだ血が通う自分の手を見て、やがては焼かれるのだと思うと、恐怖と共になんて脆いものだろうと思う。やがて先の無いトンネルに入る。今こそトンネルの中だと思うほどに毎日が苦痛であろうとも、先の無いトンネルほどではない。トンネルは最後に取っておくというのも手かもしれない。