意見せよ。

P.F.ドラッガーの「経営者の条件」を読んだ。「この本は経営者のみのための本ではない。」と訳者。初版は1966年だ。あまりこの手の本を読まないのだが、最後まで読めた。内容は、恐ろしいまでに断定調。ただ、これは大切なことだ。
以前、勤め先の上司から次の話をされたことがある。「私は以前、大学で教えていた折に、学生にレポートを書かせた。このレポートを一通り読んだ後に、再提出を求めた。何が悪かったのかを指摘せずに、ただ、文章から、『・・・と思う。』を全て除いて書くように言った。すると、再提出されたレポートは非常に立派なものだった。」
断定調は、決死の覚悟で繰り出される言葉だからこそ、強い力を内包する。「意見する」とは、まさにこのことだろう。P.F.ドラッガーも本書の中で、「意見する」ことは非常に重要であり、意思決定の際の決定打になると書いている。ものごとを決定する際、一つの方針のみであれば、良いのか悪いのかわからない。他の意見があり、初めてこの方針の良し悪しが理解できる。勿論、良く考えてから「意見する」のであるが、たとえその意見が採用されなくとも、物事を決める過程で、非常に重要なことなのである。「意見する」ものにとっては、「意見する」からこそ、考える力が本当に身に付くのかもしれない。つまりは、周りにとっても自分にとっても、不可欠なものなのだ。
ところが、最後まで読み終えて、印象に残っているのは、このことのみである。本書では非常に多くの実例が挙げられ、その多くは第二次世界大戦中・後のものであったりする。裏づけられた内容は、面白い。しかし、一度に全てを理解することは難しい。今回はこれまでとするが、また読み返すことがあるのかもしれない。

新訳 経営者の条件 (ドラッカー選書)

新訳 経営者の条件 (ドラッカー選書)