少子高齢化により、現役世代は全員野垂れ死にか。

日本の人口が減少に転じたことが発表されたのは平成17年の12月。厚生労働省の平成17年人口動態統計の年間推計によると、自然増加数が明治32以来初めてマイナスとなることが判明した。これは少子高齢化如実に表した結果である。すなわち、新生児が減少し、平均寿命が延びる。高齢者の多い社会となり、これをサポートする人は少ない。おそらく、国民一人当たりの生産量も減り、国の税収も今後減っていく。このようななか、供給体制が充分でない、資金調達ができないなどの理由で、高齢者が介護を受けられない状況が推測される。資金調達については、市区町村予算に占める社会保障費の割合を大きくするなどの対応策があると思われる。一方で、介護の供給体制に対する問題は、一筋縄では行かない。そもそも、少子高齢化や都市化に起因すると思われる核家族化により、介護保険は意味を持つ。近親者による充分な介護が不可能であるから、代替として、全くの他人がサービスを実施するのだ。まさに他人が補うしかないのである。
現在、新たな介護保険制度では地域密着型サービス(小規模多機能な居宅サービス(一部施設)を、小学校区を念頭に置いた地域圏域で実施する。事業所は常時利用者を15名以下とする。)を開始しようとしている。この施策のメリットは国からすると、施設サービスから、在宅サービスへのシフトによって、給付費を減らすことができる。すなわち支出を減らせる。また、介護保険の利用者にとっては、多くの種類のサービスを住み慣れた地域で受けられる。居宅・施設といったサービスの区分を跨って、顔なじみの職員から継続的にサービスを受けられる。
しかし、この地域密着型サービスのデメリットは非常に困難なサービスだ。メーカーにおける多品種少量生産を例に挙げるまでも無いが、少ない利用者数に、様々なサービスを、少数の人間が継続的に提供する。こんな不採算な行為は制度上とても実現できるものと思えない。保険制度であるからといっても、保険の給付を受けるようになった人間が、自分の支払った額を上回るサービスを、全員が受け続けるのは難しい。
ではどのような方策があるのか。これは小子化対策が必要だ。少なくとも結果として、子供達の人数が増えるようにし、かつての「核家族でない家族」を取り戻すことだ。ただ、個人の自由に依存することは、幾ら国が頑張っても成就しない。ではどうすればよいのか。少子高齢化により、現役世代は、誰の介護も受けず、全員野垂れ死にか。このように、悲観せざるを得ない。仮想的な「家族」の存在を信じることなどできない。今の若者が、自分の住んでいるアパートの隣人と声を掛け合う姿を想像できるだろうか。ただ一つ考えられるのは、少なくとも自分を看てくれる子供が居るものは、野垂れ死にの対象外となる可能性がある。これが正しい現状理解だろうか。

小規模多機能サービス拠点の本質と展開―認知症高齢者が住み慣れた地域で生きることを支援する

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内容は非常に詳しい。介護の現場に視点を宛て、社会福祉との関係にも言及する。実際の調査結果を踏まえた考察もある。