集団療法

最近になって医師に勧められ、精神疾患集団療法に通っていることは以前に書いた。実際に行くとさまざまな体験がある。一人でだまっているより、多くの人と話ができることで、「社会復帰」を個人的に感じている気がする。
集団療法は「社会復帰を目指すための準備運動」と個人的に位置付けている。勿論参加に至ったのは、集団療法における他の患者さんへの危害を加えることが無いだろうとの医師の判断によるものだろう。しかし、集団療法では実際には他の患者さんと話す機会もあり、「突発的」な詰問に遭うこともある。自分もこうしたことをされたことがあったのだが、直ぐにカウンセラーが間に入ってくれた。相手も直ぐにおさまるので、まさに「突発的」な事象なのだが。
色々な人と話すのは楽しい。意外と同世代が多く参加しやすいのも良い。中にはコミュニケーションをとるのに、表情を全く変えないひともいたりと、なかなか人間社会の縮図的なところもあり、現実的だ。
どんどん参加したいと思っている。一回につき1000円程度自己負担があるが、障害者自立支援法の対象者であれば、さらに半額程度で2から3時間程度のコースになっている。この価格をどう思うかは、参加しての満足度によると思うが、個人的には決して高くないと思った。

医療と福祉の経済システム (ちくま新書)

医療と福祉の経済システム (ちくま新書)

個人的には久々に出会った名著だと思う。1997年の作品だが、2008年の今を言い当てている部分も多く、内容は色あせたものでは決してない。「医療と福祉の経済システム」とは、本書の中で「長期積立型医療保険制度」として、筆者が提案するものだ。たとえば5年区切りで世代を分け、同一世代内で保険を成り立たせる。世代間では財政調整を行わないとする方式であり、今後のわが国の人口構造の変化に柔軟に対応する仕組みだ。このシステム自体の批判はここには書かないが、筆者の論述の方式として、全てが明確になっていない中で、可能な限り(場合によっては捨て身で)筆者が良いと思う経済システムを提案しているところだ。今後をなんとかして良いものにしていかなければならないという、当事者意識そのものが、不完全を承知の上での提案に結びついているのかもしれない。また、本書の素晴らしいところは、難解な経済学と医療制度を平易に読者に紹介しているところだ。筆者は「価格弾力性」すら、専門的な用語として扱っている。是非読まれることを推奨する。なお、医療について中央集権的な機構により全てを判断する方式は、決定事項が多すぎて詳細な議論が詰めきれないため、地方分権化し、より現場に近いところで、ここに事情に合わせて決めたほうが、議論が必要な部分に手が行き届くとの話を展開している。*1また、これをさらに拡大し、195頁3行目に、

一ヵ所に強力な権限が集中する社会より、すべての人が少しずつしか力を持たない社会のほうが望ましいと思う。

と述べている。権限が集中した場合、権限が集中した人をうらやむ人がいるかもしれないが、実際には完璧な人でなければ権限を操れない。人間は完璧なものなどなく必ず失敗するとの立場に立てば、このとおりだと考える。筆者の述べるとおり、権限が集中した人が存在しない社会を構成する人々はストレスがたまるのかもしれない。完全競争市場(全ての企業が価格受容体)とのアナロジーであろうと邪推し、経済学者的な発想だなあと個人的に思った。

*1:正確性に欠く恐れ有り。正しくは本書に当たって欲しい。